シングルのディスコグラフィー

コンピレーションのディスコグラフィー

歌詞はここで手に入れられます


ALBUM DISCOGRAPHY


The Muffs(1993年5月11日発売)

  1. Lucky Guy
  2. Saying Goodbye
  3. Everywhere I Go
  4. Better Than Me
  5. From Your Girl
  6. Not Like Me
  7. Baby Go Round
  8. North Pole
  9. Big Mouth
  10. Every Single Thing
  11. Don't Waste Another Day
  12. Stupid Jerk
  13. Another Day
  14. Eye To Eye
  15. I Need You
  16. All For Nothing 試聴

Produced by Rob Cavallo, David Katznelson and The Muffs
Recorded by Brian Kehew
Assistant Engineers:Jerry Finn, Sean O'Dwyer, Howard Willing, Ralph Stanfield, Jeff Sheehan
Additional Engineering by Mark Hafer

All songs written by Kim Shattuck except"Eye To Eye"written by Kim and Melanie;"I Need You"written byKim and Ronnie;"North Pole"written by Ronnie;"stupid Jerk"written by M.Saunders

 記念すべき1stアルバム。今聞くとさすがにドラムが弱いのは否めないが、キムのソングライターとしてもセンスはこの時点ですでに全開。もちろんこれ以前にもパンドラズでベーシストとしてのキャリアがあったわけだし、彼女自身もこの時すでに27歳なわけだからある程度良くなきゃダメなわけだけど、ここまでやればねえ。

 1stだけあってメンバーも「マフスの全てを見せてやるぜ!」と考えていたのかどうかは知らないが、オープニングを飾る、ジョン・スペンサー参加の「Lucky Guy」、リフで押すへヴィーな「I Need You」、ラストのアコギ弾き語り「All For Nothing」まで物凄くバラエティー豊か。どの曲もキムが過去の音楽(特に60年代と80年代)から吸収した芳香なソングライティングセンスとアメリカ人らしいカントリー風味、そして何よりもキムの音楽に対する愛情の深さが感じられるのがいい(もちろんこれは現在まで変わっていない)。また、このアルバムは唯一のアコギが大々的にフィーチャーされたアルバムである。これ以後は曲がどんなにソフトであっても、アコギを使うことはほとんどなくなってしまう。マフスの曲とアコギのはまり具合を楽しむのも一興だろう(余談だが、97年末にはキムのソロライブが行われる予定もあった。もし行われたとしたら、マフス版アンプラグド、もしくはバックヤード・セッションになったはずである。聴いてみたかったなあ)。でも当時はこれ聞いて「パンク」って言ってたんでしょ。アホか。

 詞もこの頃から、人間の関係をシンプルにそれでいてユーモアや毒も忘れずに鋭く描いた(恋愛がどーとかじゃない)ものばかりで絶品。また1stらしくキムの決意を感じさせるものも多く、やたらと「絶対に妥協はしない」って言ってますなあ。ボンクラだ(ぉ)。

 ちなみに「Eye To Eye」はバンドの意志に反して収録されたいわくつきの曲で、どうやら ディレクターがメラニーにソング・クレジットを与えようとしたためらしい)、キムはその事を示す為にベース抜きという奇妙なミックスでアルバムに収録された。すでにこの頃からメラニー脱退の兆候が感じられるのはこのせいだろうか。レコーディング中もロニーとキムが別れたりとメンバー間はギクシャクしていたらしい。                               


Blonder And Blonder(1995年4月11日発売)

  1. Agony
  2. Oh Nina
  3. On And On
  4. Sad Tomorrow
  5. What You've Done
  6. Red Eyed Troll
  7. End It All 試聴 
  8. Laying On A Bed Of Roses
  9. I Need You
  10. Won't Come Out To Play
  11. Funny Face
  12. Ethyl My Love
  13. I'm Confused
  14. Just A Game

Produced by Rob Cavallo And The Muffs
Engineered by Jerry Finn
Mixed by Jerry Finn and Rob Cavvalo
Additional Engineering by Neil King and Sally Browder

All Songs written by Kim Shattuck

 マフスの名をさらに知らしめる事となった名盤の誉れ高い2ndアルバム。1st発表直後にはドラマーのクリスが脱退、1stアルバムのツアーではジム・ラスピーサが参加(2ndの曲もジムとともに練っていった)。さらにこの作品のレコーディング直前にはメラニーが脱退、ドラマーとして元レッド・クロスのロイ・マクドナルドが参加というゴタゴタがあったにも関わらず、この完成度の高さはなんなんでしょう。ま、メラニーは元々そんなに役にたってなかったけどさ。

 ただ、個人的には、マフス史上最高の曲(「End It All」など)が入っていることも認めるが、後半には手癖で書いたような捨て曲も多くどうしても絶賛はできない。もちろん普通の基準ならば最高なんだけどね。そして一番痛いのが、ロブ・キャバロのプロデュースのせいでロックロックしているだけのサウンドになってしまい、マフスの持つ、一見シンプルなようで実は凝った微妙な味わいがほとんど消えてしまっているという事。本作の曲はライブバージョンの方が全然いいです。特に最近のアレンジとか聴いちゃうと、こっちはあんまり聴けなくなっちゃうわな。買った当時は聞きまくったのに、4thの後じゃあんまり聞かないっす。

 もちろんマフスには欠かせない名曲多数収録なので当然大推薦。ちなみに「Funny Face」はキンクスのデイブ・デイビスに対するオマージュです(ぉ)。          


Happy Birthday To Me(1997年5月20日発売)

  1. Crush Me
  2. That Awful Man
  3. Honey Moon (MP3)
  4. All Blue Baby
  5. My Crazy Afternoon
  6. Is It All Okay?
  7. Pennywhore
  8. Outer Space 試聴 
  9. I'm A Dick
  10. Nothing (MP3)
  11. Where Only I Could Go (MP3)
  12. Upside Down
  13. You And Your Parrot
  14. Keep Holding Me
  15. The Best Time Around(シークレット・トラックとして「New Jazz」収録。)

Produced by The Muffs
Engineered by Steve Holroyd and Sally Browder
Mixed by Steve Holroyd and The Muffs
Second Engineered by Jen Monnar

All Songs written by Kim Shattuck

 やったー!ロブ・キャバロが消えたー!という事だけで嬉しすぎな3rd<やめなさい。

 いよいよここからがマフスの本領発揮ですよ!何よりバンドとして初の単独プロデュースというだけでもその気合の入りようが分かるもの。ただし、そこでキムがボーカルを自宅で録音をしてしまうというパーソナルな感じがいかにもマフス。オープニングの「Crash Me」から短くてキャッチーな曲が飛び出す飛び出す(「Outer Space」は超名曲!)。キムも「バースもコーラスもブリッジもギターソロもあって曲構成は複雑になっているのに、なぜだか曲自体は短くなっていくの」とインタビューで言ってたように、15曲で35分。それで短い中にマフス汁が思いっきり疑縮されてるので濃いよー。これには賛否両論あるだろうけど、僕は「曲は短ければ短いほどよい」と思っているので大歓迎。キムも似たような思いはあるんじゃないかな。

 初めて一緒に曲を練っていったせいもあるのだろうか。ロイのドラムも前作のようにただ叩きちらすのではなく、出るところは出る、引っ込むところは引っ込むというツボを押さえたプレイを披露。おかげで、リズムがコンパクトでまとまったものへと変貌。もっとマフスの微妙さが上手く現れるようになってきた。

 詞もしみるしみる。若造にこの味を出せたって無理なもの。個人的にラブソングって、「終着点がセックスの『愛』を描いたもの」と「もっと本質的な人間の『関係』を描いたもの」と「人間以外に対する『愛』を描いたもの(例えば音楽に対する『愛』とかね)」の3つに分かれると思うんだけど、キムの書くラブソングって後者2つにあてはまるものばっかりで、一つ目のものが全くなく、あとはひとりぼっちソングばっかりという事も彼女のボンクラっぷりが良く出てるんではないかと。3rdではさらにそれを推し進めて痛すぎ。「I'm A Dick(私はチンポ野郎)」という曲が1stシングルになっちゃうのもマフスらしい。これを「痛い」と感じられなきゃボンクラとは言えないぜ!<言われたくない。

 つうわけでやっとマフスらしさが空回りせずに表現できるようになってきた記念すべきアルバム。例えば1stとかから聴くよりも、このアルバムから聞き始めた方がマフスの本質は上手く掴めるんじゃないかな。

 余談。これ誰も指摘しないんだけど、「I'm A Dick」ってフーの「Happy Jack」のパクリですね。そう考えると「I'm A Dick」って件の曲の続編にも思えるんだけど(「Happy Jack」は「ジャックが小便する」って歌だから)。喋るチンポですよ!<「やる気まんまん」か。


Alert Today Alive Tomorrow(1999年6月15日発売)

  1. I Wish That I Could Be YouMP3 
  2. Silly People
  3. Another Ugly Face
  4. Prettier Then Me (MP3)
  5. Clown
  6. Your Kiss
  7. Numb
  8. I'm Not Around
  9. Blow Your Mind試聴) 
  10. Room With No View
  11. Dear Liar Love Me
  12. In
  13. Jack Champagne

Produced by Kim Shattuck and Steve Holroyd
Recorded and Mixed by Steve Holroyd
Second Engineeres by Sam Storey and Jeff Skelton

All Songs written by Kim Shattuck

 98年にワーナーから切られるという大事件が発生。その後マタドールと契約寸前までいきながら、マタドール側がレコーディング費用をケチろうとしたために、Honest Don'sへ移籍。でもどう考えてもマタドールに行った方がマフスの音楽性を理解するファンを獲得するチャンスがあるはずなのに。でもその波に上手く乗れない不器用な感じがすんげえマフスっぽいよなあ。

 で、You Am Iのアルバムへの参加などを挟みつつ発表されたのがこのアルバム。先に言ってしまうと、これ、大傑作です。

 キムのシンガー・ソングライター色がさらに強まり、物凄くパーソナルでありながらも物凄く普遍的な「人間」の「関係」を描いた曲の深みは絶品。でもそれでもちゃんとふざけてるのはボンクラの性か。他人とは思えん。マフスって、曲調は明るくても詞は暗めなのが多いんだけど、なぜかそれを聞くとやるせない気持ちと共にとてもワクワクするのはなぜ? やっぱりそうした曲の中にキムの音楽に対する深い愛が感じられるからなんですよ。「I Wish That I Could Be You」は僕のための曲だ!<妄想

 だからボンクラはとりあえず聞いとけって。また、キムの書く曲って、元ベーシストであるという経歴のせいか、どれも独特のいなたいリズムがあるけど、このアルバムではそのグルーヴ感をより強調する方向へと推し進められているのが特徴。これは結構ハマると癖になりますよお。演奏もキムのツボをついたシンプルなギタープレイ、さらに変態化したロニーのドラム、いつも通りのロニーのベースとばっちり。このアルバムを聞いて「曲が地味」とか言ってる奴は何を聞いているのやら。

 確かにいわゆる「パンク」色は薄い、っていうかほとんどない。つうわけでそういう方面を期待したならさようなら。でも、そもそもマフスを「パンク」のみで認識している奴等は相当な知恵遅れだけと思うけどな(ギャルバンがどうとか言ってる奴は論外)。ちなみに、そんなおいらのマフスに対する印象は「いいシンガー・ソングライターのいるギターバンド」でございます。

 これは、ラモーンズをただの「パンク」としてではなく、ビートルズなどの60年代ビート・バンドの後継者としても認識している人には分かると思う。そもそも、「ラモーンズ」って名前はポール・マッカートニーが使っていた変名からきているしね。

 話がずれまくりましたが、次に特筆しておきたいのがアルバムの構成。これまでは前半は印象に残るものの、後半はスタミナ切れで、曲自体は良いのにどうも印象に残らない部分もあった。しかしここでは緩急を上手く使い分け、最後まで全く飽きさせる事なく聴かせてくれます。

 実はこのアルバム、曲順が直前で変更になり、最初は「Happening」も収録される予定でラストは「Room With No View」で終わる異なった構成だったのだ(曲目はちょっと忘れた。ごめん)。でもこの変更が大成功。ラストに「Jack Champagne」を持ってくることによって、実質本編は12曲で、ラストはある意味映画のスタッフロールのような役目を果たす結果となった。マフスで12曲っていたらそりゃ短いわけですよ。これで「凄く良かったけど、ちょっと物足りない。これならもう1回聴かなきゃ」とリスナーに思わせてくれるわけだ。

 つまりマフスの多面性が最も良い形で出たアルバムだと思うわけ。それでいて同時にとてもシンプルで聴き易い。もうマフス汁全開。最高。これが受けないってのはおかしいっすよ。「なぜ気付かない?」

 それでいて「これが最高!これ以上は無理!」って思わせるんじゃなく、「これから何かが始まるぞ」と思わせるワクワクが最高に詰っているんだから!こんなワクワクするアルバムなんてめったにないぞ。

間違った『Alert Today Alive Tomorrow』の楽しみ方&聞き所

ほら、こんなに聞き所と楽しみ方がいっぱい。というわけで(僕の中では)超快作のこのアルバム、ぜひ聞いてみてください。

 


The Muffs/Alert Tody Alive Tomorrow

★★★★★

 99年に発表されたマフス最新作にして現時点(1999年)での最高傑作

 このサイトを見ている人にはキム氏のソングライターとしての才能は言うまでもないが、とにかくビートルズやフー、キンクスの血脈を受け継ぐこの超ウェルメイドな曲の数々! 別に難しいコードを使っているわけでもないし、驚くような曲展開もない。でも、当たり前の事を当たり前にやるのがいかに難しく、尊い事か! もちろん、こういう60年代的要素が強いバンドだと一部の好事家のためだけのものになってしまう恐れがあるのだが、マフスの場合はそういった内輪要素を完全に排除し、間口を可能な限り広げようと努力し続けている。その凛とした佇まいのなんと清々しいこと!

 たまに曲のテンポが遅くなった事について文句を言っている輩がいるが、そもそも2ndまではプロデューサーであるロブ・キャバロのオーバー・プロデュースが原因で必要以上にパンク色が強かったのであり(『Hamburger』収録のデモを聴け!)、3rd以降が彼等の等身大の姿なのである。また、BPMが遅くなってもアルバム総収録時間は以前とほぼ同じで、1曲1曲がさらに煮詰められているので、全体としてのスピード感は上がっているのである。だいたい、こういう真っ当なポップ・ロックで全13曲34分なんてアルバム作る人間が今時どれだけいるよ? ラーズと同様に、どの曲にも聴こえるか聴こえないかギリギリのレベルでコーラスが挿入されているのも彼等のウェルメイド具合の証左。

 そしてそして、忘れちゃいけない、この甘酸っぱさ! 元々甘酸っぱい曲揃いのバンドだけれども、このアルバムの甘酸っぱさは他のアルバムの比じゃない極上もの。聴いててクラクラしてくるぜ。マフス(というかキム氏)の偉いところはその甘酸っぱさに伴う苦さや痛みもきちんと描いているところ。もちろんそれだったら完全に絵空事にした方がいいじゃないか、という意見もあるだろう。しかし、キム氏はそんな苦さや痛みを伴ってでもなんとか曲を現実から飛翔させようとするし、最後の最後にはそれを実現させてしまうのだ。同じ御伽噺でもちゃんと手順を踏んでいる方が心に響いてくるだろ? もう、これはある意味青春映画ですよ。青春映画は青春映画でも『ジョージア』や『ショー・ミー・ラヴ』のような痛い系だけどね。

 痛いんだけれど、全体にとびっきりのユーモア(でも中学生レベル)で味付けして、さらっと聴けるようにしてるのも最高(それが逆にさらに痛いって話もあるが)。こーんなに素晴らしいアルバムが無視されてるってのは納得できんぞ。

 マフスはこの程度の認知度で終わるバンドではないし、終わらせてはいけないのだ。たくさんの人に絶対に絶対に聴いてもらいたい、おいらの宝物です。

Silly People(試聴)

I Wish That I Could Be You(試聴)

参照: 「I Wish That I Could Be You」歌詞&対訳(From all blue baby



The Muffs/Really Really Happy
(日本盤発売2004年7月21日)
(US盤発売2004年8月10日)

★★★★★

 ファイヴ・フット・トゥ・レコーズ移籍第一弾となるマフスの5thアルバム。前作『Alert Today Alive Tomorrow』からは5年振り。っていうか、そもそもファイヴ・フット・トゥ・レコーズはアンナ・ワロンカーとマフスのアルバムを出すために設立されたわけで、当初の目的を達成出来てよかったですな>アンナ・ワロンカー&シャーロット・キャフィー社長。

 驚いた事に、本作はキムの自宅の台所で録音された宅録アルバムなのである(さすがにドラムはスタジオで録音しているが)。しかも、プロデュースに加え、エンジニアリングまでキムが担当しているのだ。しかし、彼等はそんなハンデをものともせずに、素晴らしくウェルメイドなギター・ロックの傑作を作り上げる事に成功した。個人的にはキンクスの『The Kink Kontroversy』や、Xの『See How We Are』に匹敵する内容だと思う。

 サウンドは『Alert Today Alive Tomorrow』の発展形にして完成形。まあ、そんな事言ったら、この人達のやっている事はデビュー時から何も変わっちゃいないんだが。例えて言うならば、このアルバムは、おもちゃ屋のウインドウの片隅でずーっと売れ残っている、ホコリをかぶった人形のようなものだ。彼等は自分達の作品のそんな運命、性質を理解した上で、その儚さ他愛なさのために命をかけ続ける。なぜなら、彼等は子供の頃からずっとそんなおもちゃを愛してきたから。それはポップ・ソングを愛する人間の意地と誇りと言い換えてもいいと思う。だいたい、この時代に全17曲で43分(日本盤のボーナストラックを含めると全19曲47分)という短さなんだぜ。その心意気だけでおいらは心動かされてしまうよ。

 あなたは誰からも愛される人間かもしれないけど、私はそんな類の人間じゃない。そんなはみ出し者が、ひとりぼっちである運命を引き受け、前に進み出す感動的な決意が本作にはある。だからこそ『Really Really Happy』なのだ。アルバムの中で、なぜ「I am a freak」「I don't care」といったフレーズが執拗に繰り返されるのか、その意味を考えてみて欲しい。

 いや、もちろんマフスの事だから決して泣きには走らないし、バンド史上最高にメランコリックな名曲「My Awful Dream」でヘッタクソなハーモニカを吹いたりするといったユーモア・センスも健在なのでご安心を。寂しげな横顔はどうしても漏れてきてしまう「気分」程度のもんで、基本的にはとってもチャーミングなポップ・アルバムだ。そこがまたマフスらしくて嬉しいじゃないか。

 60年代の英国ロックから栄養分をたっぷりと吸収したキムのソングライティング、徹底的に練り上げられた無駄のないアレンジは相変わらず抜群。ここまで無駄がないと逆に過激ですらある。バックにうすーく挿入されるコーラスなんかはマフスの真骨頂ですな。『Blonder And Blonder』収録の「Just A Game」以来、9年振りに使用されたアコースティック・ギターも効果的。そしてそして、ミドル・テンポのナンバーが多いからこそ、ロイの唄心溢れるキース・ムーンばりのドラミングが冴える!冴える!冴える! いやあ、辞めないでくれて本当に良かった。来日公演も頼みますぜ!

「Really Really Happy(視聴)」

「Don't Pick On Me(視聴)」


Hamburger(2000年1月18日発売)

  1. Get Me Out Of Here
  2. You Can Cry If You Want
  3. Brand new Chevy
  4. New Love試聴 
  5. I Don't Like You
  6. Guilty
  7. Right In The Eye
  8. I Need You
  9. Beat Your Heart Out
  10. Love
  11. Rock And Roll Girl
  12. Right In The Eye
  13. Everywhere I Go
  14. You Lie
  15. Toilet Paper
  16. I'm Confused
  17. When I Was Down
  18. Sick Of You
  19. No Action
  20. Become Undone
  21. Goodnight Now
  22. Nothing For Me
  23. Kids In America
  24. I'm A Dick
  25. Pacer
  26. My Crazy Afternoon
  27. Silly People
  28. My Minds Eye
  29. Happening
  30. Do THe Robot

Tracks 1, 2, 3 Produced by Waterbottle Jones
Tracks 4, 5, 6, 7 Produced by Bill Bartell and The Muffs
Tracks 8, 9 Produced by Phil Ek and The Muffs
Track 10 Produced by Love
Track 11 Produced by Brian Kehew and The Muffs
Track 12-14, 30 Produced by Rob Cavallo, Dave Katznelson and The Muffs and anyone else who happened by
Tracks 15, 16, 17, 18 Produced by Kim Shattuck
Tracks 19, 20, 21, 22, 23 Produced by Rob Cavallo and The Muffs
Tracks 24, 25, 26, 27 Produced by The Muffs
Tracks 28, 29 Produced by Kim Shattuck and Steve Holroyd

Tracks 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 30 Kim/Melanie/Ronnie/Criss
Tracks 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29 Kim/Ronnie/Roy

All songs written by Kim Shattuck except:No Action-Elvis Costello, Pacer-Kim Deal, Kids In America-Kim Wilde, I Need You-Shattuck/Barnett, You Lie-Paula Pierce, Beat YOur Heart OUt-Robert Lopez, Rock and Roll Girl-Paul Collins, YOu Can Cry If You Want To-Reg Presley, Brand New Chevy-Andy Gortler, Do The Robot-Chris Bailey, My Minds Eye-Marriot/Lane

 キムの部屋にはキンクスやビートルズのブートCDやブートビデオが転がりまくってるらしいが、このコンピレーションもそういったボンクラのツボを押さえまくった選曲。アルバム未収録曲をほぼ全て押さえたうえで、デモテイクや未発表曲、別バージョン収録。そしてそれらをレコーディング順に並べ、ブックレットには貴重な写真の数々、さらにメンバーによる詳細な解説つき。正しいコンピレーションのあり方だね。実はブートでもオフィシャルでもここまできちんとやってるのはそうそうないもんなんで誠に喜ばしいことです。それでいて「Do The Robot」をラストに持ってくるという遊び心も忘れてはいない。最高です!ブートマニアの面目躍如。

 このコンピを「ベスト盤」と勘違いする人が多い事からも、その完成度の高さが伺えますね。あえて欠点を挙げるなら針起こしが何曲かある事か。「Pimmle」と「You Lied To Me」は未収だけど、これは別に入ってなくてもいいでしょ。ジャケもいいし、マフスを語る上では欠かせない一枚。詳細に関しては下の全曲解説を見てくれ。

全曲解説(という名の感想)

01. Get Me Out Of Here  Nardwurのコンピ『Clam Chowder And Ice VS. Big Macs And Bombers』に提供。マフスが最初にレコーディングした曲。全てはここから始まった。はじまりが「Get Me Out Of Here」なんてタイトルの曲だったなんてボンクラは大共感っすよ。今聞くと結構ギターポップっぽいですね。もうこの時点でキムのソング・ライティングは完成しててすごすぎ!

02. You Can Cry If You Want  Dog Meatのトロッグスのトリビュート盤『Groin Thunder!』に提供。当然トロッグスのカバー。マフスの60年代志向を垣間見ることのできる曲。

03. Brand New Chevy  Estrusのコンピ『The Estrus Gearbox』に提供。Devil Dogsのカバー。来日公演でも毎回1曲目に演奏されたんでおなじみです。ここまでの3曲が最初のレコーディング・セッションでレコーディングされた作品で、全て4トラックでレコーディングされたらしい。しかし、この3曲のセレクトの仕方がいいですねえ。中坊テイストが出まくりで最高。

04. New Love  おなじみのマフスの1stシングル(Sympathy For The Record Industryから発表)。もうこれは何も言う必要ないでしょう。超名曲です。こんなに聞いててワクワクするロックンロールなんてそうそうないですから。今でもライブで良く演奏されます。

05. I Don't Like You  シングル「New Love」のB面に収録。元々はこの曲がA面になるかもしれなかったらしい。マフスの曲の中でも特にガレージ色の強い曲。最近もなんかのコンピに提供してました。

06. Guilty  Au Go Goより発表された2ndシングル。これもすごいポップでいい曲なのに最近のライブではあまりやらない。当時はギターが2本だったから出来た曲ではあるのだが。もし今ライブでやったらリフの部分は音が薄くなりすぎてしまうだろう。っていうか今の耳から聞くとなんか手癖で書いたような曲っすね。つまりはキムの最も基本的な部分から作られた曲という事ですが。

07. Right In The Eye  GuiltyのB面曲。Guiltyとは反対に現在でもライブの定番(ライブだとキムはブリッジの部分で絶対音外しますが)。ただこのシングルだとGuiltyの方がいい曲だと思うんだけど。つうかタイトル(Right In The Eye)は素晴らしいです(バカ)。 おそらくここらへんの曲は盤起こしなんだろうけど、この曲は特にプチプチ鳴りまくり。マスターないの?

08. I Need You  Sub Popより発表された3rdシングル。1stアルバムにも収録されてるので特に目新しさはないですが、一応バージョン違い。

09. Beat Your Heart Out  I Need YouのB面。The Zerosのカバーでキムとクリスのデュエット。ライブでもおなじみ(最近のライブではキムとロニーのデュエットでカバー)。マフスのカバー曲選ぶセンスって本当にボンクラ(と言うかただの中坊)・テイストが強いです。

10. Love  超お宝音源!! コートニー・ラブがキムの家の留守電にふきこんだ時の模様。聞けば分かります。コメントとしては「ボンクラをなめるなよ!」ってとこですかね。ざまー!(バカ)

11. Rock and Roll Girl  The Beat(スカじゃない方)のカバー。Carolineのコンピ『Freedom Of Choice』に提供。キムは「I wanna be with a rock and roll girl」という歌詞を「I wanna beat up a rock and roll girl」 というふうに一部変えて歌おうとしたらしい。色々問題があって実現しなかったらしいけど。もし本当だとしたら、「Love」の次にこれをもってきたのはかなり意味深、つうかそのまんまですね。

12. Right In The Eye  7とは別バージョン。1stアルバムと一緒にレコーディングされたらしいんですが、これってコンピか何かに提供されたんでしょうか?おそらく未発表バージョンだと思います。この曲をレコーディング中のスタジオになんとジョーン・ジェットが訪ねてきたらしい。

13. Every Where I Go  1stアルバムにも収録されている曲のデモ・バージョン。このバージョンは1stアルバムのカセット・テープに収録されているそうです(CDには新たにレコーディングした方を収録)。デモか新しいバージョンかどちらをアルバムに収めるか、バンド内でそうとうもめたようだ。ちなみにこの曲は最近FrutopiaのCMソングになった。

14. You Lie  キムとメラニーが以前在籍していたバンド、パンドラズのカバー。確かプロモ盤にのみ収録されていたはず。こうして聞いてみるとパンドラズの曲も結構いいですね。あ、でもパンドラズは別におすすめしませんが。ここまででマフスのガレージ期は終わりです。

15. Toilet Paper  つなぎの曲。なんかキムが喋っているけど、なんて言ってるか分かりません。

16. I'm Confused  ここがらが本作のハイライトである、キムが1人で録音した8トラック・デモの音源です。普通デモって言ったらギターの弾き語りとかにちょっとした装飾音がついた程度のものを想像するけど、キムの場合は違います!なんとデモの時点でギター2本、ベース、ドラム(おそらくこれは打ち込み)が録音されていて、ボーカルはダブル・トラックです。この曲自体は2ndに収録されていますが、すでにこの時点でアルバム・バージョンと寸分も違いません。これでレコーディングにすごい時間をかけるんだから、キムの完璧主義ぶりはすごすぎです。レイ・デイヴィスかリー・メイヴァースかキム・シャタックって感じですよ。しかも、このデモが何故か最新作(『Alert Today Alive Tomorrow』)のサウンドに近くてかなり不思議な感じが。

17. When I Was Down  2nd用に書かれた没曲のデモ、なんですが曲のレベルめちゃくちゃ高いです。こんなんで没になっちゃうんだから、本当にすごいなあ。だってこの程度の曲でシングル・カットしてるバンドとかたくさんいるし、この程度の曲で「名曲!」って評されてる場合もよくあるしねえ。曲自体はタイトルから分かる通りいかにもキムらしい、ボンクラ曲。僕もすっげー好きな曲。

18. Sick Of You  これも2nd用デモから。この曲は94年ごろのライブで「Pimmel」と共に何回か披露されていた曲なんでマニアの方にはおなじみかもしれません。ロイが入る前からロイのドラムを念頭に入れて書かれた曲だそうです、が、ロイが気に入らなかったので没に…。残念すぎ。これでやっと日の目をみたわけです。良かった、良かった。

19. No Action  ここからは再びバンド編成に戻ります。これはLook Outのコンピ『More Bounce To The Ounce』に提供されたエルビス・コステロのカバー。元々ロニーがボーカルをとる予定だったらしいが、全てのパートを録音し終わった後でロニーが自身をなくしてキムにボーカルを替ってもらったそうだ。だからこんなに根暗に聞こえるんですね。つうかこの曲はロイの爆裂ドラムを味わうための曲なんでそんなのは別に問題なし。

20. Become Undone  名曲「Sad Tomorrow」のシングルのB面。なんでアルバムからもれたのか分からないほどの名曲。切なすぎ。レッド・クロスのスティーブ・マクドナルドがゲストとして参加。

21. Goodnigt Now  これまた「Sad Tomorrow」のシングルから。こちらはうってかわって、フーなどを思わせる、ガレージっぽい曲。キムはこの曲をThe Fall-Outsを意識して書いたそうな。

22. Nothing For Me  Sympathy For The Record Industryのクリスマス・コンピ『Happy Birthday Baby Jesus』に提供されたマフス唯一のクリスマス・ソング。もうタイトルから分かるとおり男泣き全開な曲なわけです。まあライナーでキムも白状してるように曲自体はエルビス・”ドーナツ”・プレスリーの「One Night With You」パクリなんだけど。

23. Kids In America  映画『クルーレス』のサントラから。キム・ワイルドのカバーです。この映画自体はいまかにもエイミー・ヘッカリングらしい傑作で、マフスを起用するところも彼女らしいっすね。また、『クルーレス』とマフスってなんか縁が深いです。テレビ版の方にゲスト出演したり、同じくテレビ版に主題歌提供したり(没になったそうですが)とか。ちなみに『クルーレス』でのマフスの使われ方と、『初体験リッジモント・ハイ』での(キムの敬愛する)ゴーゴーズの使われ方は全く一緒です。やっぱり分かってる人は分かってるんだな、エイミー・ヘッカリング!

24. I'm A Dick  この曲は3rdアルバムからの先行シングルでした。ここに収録されているのはシングル・バージョン。

25. Pacer  シングル「I'm A Dick」のB面。The Ampsのカバーです。マフスの連中は本当にキム・ディール好きが好きらしい。日本公演のサウンド・チェックでもこの曲演奏してたし、『Happy Birthday To Me』のツアーではピクシーズの「Mantaray」カバーもしてたし。この曲も明かに盤起こし。

26. My Crazy Afternoon  これは珍しい音源!なんと元バングルズのスザンナ・ホフスがバックで歌っています。キムが初めて行ったライブは82年のゴーゴーズだったらしいし、バングルズも最初にカバーした曲のひとつ、ってインタビューで言ってましたから、これは嬉しかったことでしょう。

27. Silly People  最新作『Alert Today Alive Tomorrow』に収録されている曲ですが、曲自体は結構古くからあって、3rdアルバムに向けてのセッションでもメロディーが全然違うバージョンが演奏されたりもしてました。ここに収録されているのはおそらく3rdアルバムのレコーディング・セッションから。この曲はインディーズ映画のサントラに提供する予定だったらしい。ゲストとして80年代にいたメタル・バンド、ポイズンのCC Deville(どういうつながりなんでしょ?)がギターを弾いとります。もろメタルなギターで、グイングイン唸りまくっていてマフスとは合わないかなー、とも思えるけど逆にミスマッチが面白く聞けます。それと同時にキムのギターの上手さも再確認。また最新作の素晴らしさもあらためて実感。この曲と「Happening」だけ曲の骨格が異様にしかっりしてますもん。

28. My Minds Eye  日本の皆さんには来日公演とともに思い出深いであろう、スモール・フェイセズのカバーです(Holidaysとのスプリット「Happening」より)。元と比べると、マフスのバージョンの方が演歌くさくなくて、ボンクラっぽいんで、僕はこっちのバージョンの方が全然好き。

29. Happening  前述のスプリットのタイトル曲。「I Wish That I Could Be You」とか「Pretteier Than Me」とならんでマフスの本質をギュっとつめこんだ名曲。元々「クルーレス」のテレビ版の主題歌として書かれたらしい。最新作である4thアルバムにも収録予定だったが、直前でオミットされてしまいました。どうやら「あまりにもラモーンズっぽい曲だから」らしい。えー?そうかあ?でもこの事からもマフスがいかにパンクと見られるのを嫌がっているか分かるかと。いや、僕もラモーンズ好きだけど、マフスはパンクじゃないっすよ。ただのボンクラ・バンドだよ(バカ)。

また前述のスプリットに収録の2曲はハンバーガー収録時のものと、このアルバムに収録のものでは微妙に音が違うので要チェック。

30. Do The Robot  「Big Mouth」のシングルのB面だった、クリスがボーカルをとるThe Saintsのカバー。キムは全然気に入ってないみたい。ちなみにこの曲のみシングルとバージョン違い。あのダラダラとしたエンディングがばっさりカットされています。まあ、これは仕方ないか。

・アナログ盤のみの収録曲(全てキムが一人で製作したデモ)

Angel Without A Halo

 元々メラニーについての歌らしい。その後「Happening」などと同様に「クルーレス」の主題歌に提供(しかし却下)。「あなたは輪っかのない天使」「誰にでも嘘をつく」「口は悪いし、性格も悪いのね(キムは「with a bad mouth」って書いてるけど、実際には「with a nice mouth」と歌っている)」ってきっついなー。っていうかそんな歌詞書くなよ(ぉ

 主題歌用という事で、短縮され歌詞も微妙に変えられているそうだけど、(「Happening」がそうであったように)わずか一分の曲でもちゃんと起承転結をつけられるってのは簡潔なソングライティングを心掛けているキムならではのもの。やっぱりおいらはこういう曲に対して強烈に「マフス」を感じるんだよなー。

Thumbelina

 3rdアルバムに向けてのプリプロの時点で既に演奏されていた「Silly People」の元となった曲(サビのコード進行が全く同じ)。一部の人の間では(おいらとか)バンド・バージョンの音源が出まわっていてお馴染みの曲だったのだが、これは全く知られていないキム一人で作ったデモ・バージョン。まあ、デモって言ってもキムが作ったわけだから当然ベースもドラムも入ってるんですけど。

曲自体に関して言えば当然「Silly People」の方が完成度も高いし、出来もいいのだが、このヴァースのいいかにも「手癖で書lきました」って感じもなかなか捨て難いのでは?

Upside Down

キムが自宅で録音した「Upside Down」エレキ弾き語り。前にも少し書いたけれど普通こういう場合だと「アコギ」弾き語りってのが普通だけど、あくまで「エレキ」ってのがキムらしいじゃありませんか。キムのシンガー・ソング・ライター的側面が強く出たデモ。この味わい深さはSSWならではのものでしょ。染みるわ。

サビのメロディーが微妙にバンド・バージョンとは異なる。


以下のアルバムはキム氏が単独で参加したサイド・プロジェクトのアルバムである。


The Beards/Funtown
(2002年4月16日発売)

★★★★★ 

01.This Girl
02.True Confessions
03.My Pillow
04.T.S.Eliot
05.1000 Years
06.Make It In America
07.Big Dumb World
08.Sidewalks
09.All About You
10.Her Flowers
11.Thalassocracy

Produced by Jeff McDonald and The Beards
Recorded 2001 at Pill Hill Studios, Los Feliz CA

With Special Guests:
Jeff McDonald: guitar on "This Girl"
backup vocals on "T.S.Eliot"
Anna Waronker: backup Vocals on "Her Flowers"
Gere Fennely: harpsichord on "Sidewalks"
Kevin Sutherland: percussion on "My Pillow"

Tracks 1, 2, 4, 6, 8, 9, 10 written by Lisa Marr
Tracks 3, 5, 7 written by Kim Shattuck
Track 11 written by Mr. Frank Black

 もしあなたがもう一度ポップソングの魔法を信じたいのなら、何はなくともこのアルバムを聴くべきだ。このアルバムがロック史を変える事はないだろうし、新たな流れを作る事もないだろう。ただひたすらに「ポップソング」という、人類のためにはこれっぽちの役にも立たない代物を作る事に命をかけているバカな連中がまたやらかした、というわけだ。全11曲29分傑作である。もちろん、こういう他愛のない歌の中にだって真実はあるのだよ。おれが言いたいのはこれだけ。下にゴチャゴチャ書いたのは無視してくれ。

 

 というわけでマフスからキムが、元Buckにして現Lisa Marr Exeperimentの二人(Lisa MarrとSherri Solinger)が参加したサイド・プロジェクト「The Beards」のアルバムが到着いたしましたぜ。実は現物が届くまでは、単純にキム氏の新曲が聴けるというだけで星10個ぐらいつけてもいいかなあ、とか思ってたんだけど、実際に聴いてみて、いかにおれが白痴であったかを思い知らされたよ。これは二人の才能あるソングライターが自分のすべき事をきちんと成した、嘘も虚栄もない誠実な作品である。だからそれに対して星10個とかアホな事はするべきじゃないんだっての>おれ

 誤解しないでほしいのは、このThe Beards、以前に予想していた通りBuck寄りのユニットで、主導はあくまでもリサ氏。じゃあマフスのファンは満足できないのか? というとそういうわけでもない。実はアルバムの要所要所を締めるのはキム主導の曲なのである。「My Pillow」はキム氏のボブ・ディラン好きが初めて形になったフォーキーな曲だし、「Big Dumb World」は『Alert Today Alive Tomorrow』を経たマフス節が炸裂しまくる名曲! おれはこの曲のためだけに一万円払ってもいいね。そしてアルバム最終曲ではフランク・ブラックのカバー「Thalassocracy」(アルバム『Teenager Of The Year』からってチョイスが最高!)を披露し、久々にキムのシャウトが大爆発するのだった。

 しかし、ソングライターが二人、それも違うバンドから出張して来たってのに共作曲がゼロってのはある意味すげえな。ボーカルも曲を書いた人間が担当するという完全分業制だし。というかこの作品に「友達と楽しくやりましたー。」ってな気持ち悪さがないのは、二人のソングライター(特にキム)に「死んでも内輪受けになってたまるか。」というはみ出し者(マフスは「シーン」のどこにも属せていないし、リサ氏はL.A.に住むカナダ人だ。)ならではの誇りと意地と信念があるからだ。だからアルバム全体からはリラックスしたムードだけでなく、常に程よい緊張感も漂ってきて途中で聴き手をダレさせない。

 まあ、キム氏の曲と比べると、リサ氏のそれは相対的に浅い所で発想しているのでちょっとつらいんだが、どちらも非常にウェルメイドなポップソングである事に違いはないので、聴いていて不満を感じる事はない。さすがに二人ともこういう曲は書き慣れてますな。

 プロデュースはレッド・クロスのジェフ・マクドナルドが担当。同じくレッド・クロス組からGere Fennellyがハープシコードで、元ザット・ドッグのアンナ・ワロンカーがコーラスで参加している。

 特筆すべきは、エンハンストCDとして全収録曲のビデオクリップが収められている事。まあ中身は完全に自主製作レベルの代物だけど、その心遣いが嬉しいじゃありませんか。

Make It In America(試聴)

My Pillow(試聴)


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