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狂牛病
炭疸菌

狂牛病って何?

狂牛病(正式には牛海綿状脳症 BSE:Bovine Spongiform Encephalopathy)は,1986年に英国で発見された.BSEにかかった牛は脳を冒され,歩くこともままならなくなり死亡する.BSEにかかった牛の脳を顕微鏡で見ると,非常に細かい穴がたくさんあいたように見える.この様子がスポンジに似ているので,海綿状脳症と呼ばれている.

狂牛病の原因は?

BSEの病原体はプリオンと呼ばれる異常な蛋白粒子で,通常のウイルス粒子よりはるかに小さく伝染性を有する非定型なウイルスとも呼ばれている.しかしプリオンは感染性のある核酸を有してないと考えられている.従って通常のウイルスの定義には当てはまらない.正常なプリオン蛋白(PrP)は脳等の神経細胞の膜に多く含まれているが病原性を有する異常なプリオンが入ると神経細胞の正常なプリオンに接触して次々に変性してしまう性質を有している.異常プリオン蛋白は神経細胞の細胞質に蓄積し、空胞を形成する.

 BSEのプリオンは物理化学的処理に対して極めて強い耐性を有しており,細菌や一般のウイルスを不活化する温度や煮沸では殆ど不活化されません.特に乾熱に対しては強く130℃で30分間加熱しても不活化されないと言われている.国際獣疫事務局(OIE)の基準では組織の大きさを5cm以下に細分したものを133℃以上,3気圧で20分以上の高圧滅菌が必要であるとされている

また、イオンや紫外線の感作に対しても強い耐性を有している.プリオンの不活化に有効な薬剤としては次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度2%以上の溶液で1時間以上)があげられる。


BSEの症状
BSEは潜行して進み,長い時間を経て必ず死に至る牛の神経性疾病である.急性な症状を示し,急激に悪化する症例はめったに見られない.約2歳齢の牛が希に発病することもあるが,大多数は4〜5歳齢の成牛に発症する(30ヶ月齢以下での発症は少ない).それが逆にBSEの潜伏期間が2〜8年と考えられる理由でもある.
BSEの発生数は肉牛より乳牛に多く見られた.英国での発生の割合は59.3%が乳牛で15.3%が肉牛であった.この理由は乳牛により多くの肉骨粉が配合飼料として使用されていたためと考えられる.
発症後死亡するまでの経過日数は2〜3週間から1年間とまちまちである.

感染する動物
BSEに感染した牛の脳・脊髄組織の乳剤を直接牛,羊,山羊,豚,マウス,ミンク,キヌザル等に接種すると感染を起こす.また感染した牛からの材料を羊,山羊,マウス,ミンク等に経口的に与えて感染を起こすことがわかっている.豚や鶏は経口的に与えても感染を起こさない。また,英国の猫にも海綿状脳症の自然発生例が1990年以来多数報告されている.
 また英国の動物園でも多くのウシ科の動物に海綿状脳症の発生が見られ,それらとBSEに汚染した飼料との関係が疑われている.発症した動物にはニアーラ(Nyala),カモシカ(Gemsbok),アラビアカモシカ(Arabian oryx),シマカモシカ(Great kudu),大カモシカ(Eland)が報告されている.その他チータ,ダチョウやトラにも海綿状脳症が発生したという報告がある.

人に対する感染性
 人のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は菜食主義者にも発生することや,英国でのCJD発生率は他の欧州諸国のCJD発生率と変わらぬことから,1995年まではBSEは人には感染しないと言われてきた.一方,羊のスクレイピーは約250年前からその存在が知られてきたが,スクレイピーに感染した羊の肉や脳などの臓器を食べても人に病気を起こしたという報告はない.従って羊のスクレイピーは人には感染しないと一般的に考えられている.
 英国政府は,BSEが発生して以来1995年まで・BSEは恐らく羊のスクレイピーが種間バリアーを越えて牛に感染するようになったものと考えられるから,スクレイピー同様BSEも人間には感染しないであろうと主張してきた.しかし,スクレイピーと異なり,BSEは人に感染することが次第に明らかになってきた.
 1996年に新型の人のCJDがBSEのプリオンによって起こされたのではないかと疑われるようになった理由としては次の5点が挙げられる.
 1) 1994〜1996年頃の人でのCJDの発症は英国のみで,その中の8人はすでに死亡している.
 2) 通常のCJDでは平均年齢は65歳であるが,これらの患者の年齢は16歳ないし39歳と通常のCJD患者の年齢と比較して異常に若い.(10人中3人は10代後半,5人が20代,2人が30代であった.)
 3) 人の症状は行動や性格の異常,運動障害,知覚異常,記憶喪失,異常な機能低下,脚痛等の症状を示したが経過は典型的なCJDの症状と異なっていた.
 4) CJDに特異的に見られる脳波の型が見られなかった.またこれら10人の発症後の生存期間は平均13ヶ月である(通常のCJDは6ヶ月).
 5) 患者はいずれも脳に海綿状の症変が見られた.また死亡した人の解剖ではプリオン蛋白の大きなプラックの形成が見られた.(通常のCJD患者の脳と異なる病変)
WHOの最近の報告によると1996年から2000年末までの世界で見つかった新しいCJDの変異株による患者(vCJD)の数は英国で87人,フランスで3人,アイルランドで1人(合計91人)であった.英国の屠場関係者にBSEに患った人のいないことや,1980年代中頃までに牛の脳組織の入ったハンバーガーを食べた人の数を考えると,BSEのプリオンを食しても発症する率は極めて低いものと考えられている.

食品の安全性と問題点
BSEに感染した牛の体内での病原体の分布状態は牛肉や臓器の消費者にとって一番関心の高い問題である.英国ではBSEに感染した牛の組織の中で汚染の可能性のある下記の臓器を特定臓器(SBO)と呼び,人の食料として使用してはならないと決められている.
 1) 6ヶ月齢以上の牛の脳,脊髄,脾臓,胸腺,扁桃腺および腸管(回腸,結腸)
 2) 6ヶ月齢以下の子牛の胸腺と腸管
 以上の臓器の他に牛の眼にも病原性が認められたので,英国では牛の頭は舌以外はすべて食料としての使用を禁止した.
 一方EU委員会は1994年の決定で,脳,脊髄,腸,脾臓,扁桃腺,胸腺,下垂体,胎盤,副腎,膵臓,卵巣,血清,精巣と培養細胞を英国から他のEU諸国に輸出することを禁止した.また1996年3月には英国の牛,牛肉及びその牛加工品,医薬品原料,肉骨粉の輸出も禁止した.

今後の見通しは?

一連の研究により,nvCJDはBSEが人間に感染した病気であることはほぼ確実になりました.原因となった食品が1989 年末の牛の内臓食用禁止令以前の食べ物だとすると,潜伏期間は10年以上と推定されます.1996年3月での患者数が10人で,それから4年半たった2000年10月の時点で77人ですが,この増加率が何を意味しているのかよくわからないのです.というのは,平均潜伏期間がわからないので,患者数の爆発的増加があるのかどうか,あるとしたらいつなのかがわからないのです.

           

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